October 19, 2004
Waltz For Koop / Koop
クールの地平
そうだ、確かにKoopの世界に「Bitches Blew」のマイルスは訪れなかった。あるのはひたすらブルーでクールな、あの頃のジャズ。時代はフレームに収められ、煙がかったモノクロームの中にある。
Koopはスウェーデンをベースに活動するマグナス・ジングマーク、オスカー・シモンソンによるユニットだ。マグナスはヒップ・ホップ、デトロイト・テクノを経由し、かたやオスカーはコルトレーン、チャーリー・パーカーを崇めるピアノ奏者としてジャズサイドから、二人はストックホルムで”クールのスウィングをファンクに置き換える”、そんなアプローチを開始する。
1stアルバム「Sons of Koop」がエレクトロニクスを多用、ダークな印象だったのに対し、2001年発表の「Waltz for Koop」はクールの薫香と、オーガニックの揺らめきにあふれた傑作だ。生楽器の編成を前面に展開、デジタルのギザギザは注意深く背景に織り込まれている。洒脱な50年代の空気を呼吸しつつ、だがそこには「今」でなければあり得なかった音がある。多くのラウンジ系コンピレーションにも収録され、ヒットを放ったT4 Summer Sun feat. Yukimi Naganoの煌めきが清々しい。参加アーティストもマニアックに豪華。T6 Modal Mileに元Galianoのアール・ジンガー aka ロブ・ギャラガー、「Time Piece」で一線復帰のソウル詩人、テリー・キャリアーがT7で奥深い渋さを披露する。さらにT3 Babyとタイトルトラック T1を歌うセシリア・スターリンの涼やかさはKilling!の一言に尽きる。
アルバム=70分のフォーマットを一蹴、35分というコンパクトな時間に作品をまとめ、かつそれぞれのトラックには凝縮された豊潤さが漂う。
耳を澄ませ、Co-Operationの冒険はまだまだ続く。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥2,095
オリジナル盤発売:2001年
昨年Nicola Conte、2 Banks of 4、Rimaらのリミックスを収めたWaltz for Koop: Alternative Takesがリリースされている。レーベルであるCompostのオフィシャル・サイトにて試聴さらに一曲が無料でダウンロード可能だ。
ちなみにCo-Operationはグループ名の由来となった「協力/協同」を意味する単語。
文中のユキミ・ナガノ嬢。名前から「おお?」と思わされるが、れっきとした日系スウェーデン人。線は細いがきちんとした量感のある歌声が実に清涼。Summer Sunというトラックに与えた輝きはちょっと筆舌に尽くしがたい。その他StatelessやSwell Sessionらのプロジェクトにも参加。先日発売となったHirdのファーストアルバムではほぼ全曲でボーカルを取っている。近くソロ・アルバムを発表との情報もあり。
Posted by muzseek at
|
(2)
|
October 11, 2004
Skalpel / Skalpel
『Sculpture』試聴はこちら
(mp3)
「北」からやってきた音
北というと、やはりどうしても敗北や死を連想してしまう。童話や小説でも北へ逃げる登場人物はどういう訳か悲惨な死を遂げることが多い(椹木野衣)。だが実際のところ、北から訪れる音楽の多くは美学やリリシズムをたたえつつ、しかし音作りにはゆったりとした暖かみがある。
ポーランド出身のDJ、March CichyとIgor PudioによるユニットSkalpelのセルフタイトルに成る1st アルバムもそんな資質に溢れた一枚だ。Ninja Tuneに送った「Polish Jazz」のデモが話題となり、昨年6曲入りEP「Sculpture」を発表。その簡明さと絶妙のバランス感は昨今の複雑化したシーンでは得難いものだ。
膨大な60'sポリッシュ・ジャズのコレクションから抜き出されたサンプルを基に再構築、「21世紀のマニアに向けて新たに創造」されたト彼らのラックに、安易な「ネタ使用」などという言葉は侮辱ですらある。有機的に絡み合うブレイクは複雑に陥ること無く、全く別の生き物としてここに息づく。
T2 1958では女性ボーカルのメロディを裁断しつつ、チョップアップされたドラム、金管がピアノとともにドライブする。T6 Break Inのレイドバック感や暖かさ、T7 QuizやT9 Theme From Behind the CurtainのポストDnBとも言えるザックリとしたビートの使い方も良い。それぞれのトラックに盛り込まれたユーモアがT3やT8といったシリアスなトラックに対してカウンターとして効いている。そしてラストを飾るT10 Sculptureは様々に細かなブレイクを配しつつ、シンプルかつ玄妙にスウィングする
「サンプリングはアートか?」。Skalpelははっきりと「yes」を唱えるだろう。たった数秒のブレイクが全く新しいトラックとして、再創造される。そのプロセスに人々は驚き、高揚する。反復から生まれる創造こそ、人の営みだ。だからこそこの二人には、さらなる次を期待して良い。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥1,630
オリジナル盤発売:2004年
Posted by muzseek at
|
(0)
|
September 25, 2004
B2-UNIT / 坂本龍一

『Riot In Lagos』試聴はこちら
(RealPlayer)
坂本龍一a.k.a.教授の作品の中でもひときわ怪しい輝きを放つアルバム『B2-UNIT』。YMOを結成してまもなくの1980年にロンドンでレコーディングされ、当時としては前衛的で多くのテクノ系アーティストからも支持を集めている。
1984年の彼の代表作『音楽図鑑』では生音を多くの曲で聞けたが、この作品は収録曲のほとんどが生音を使っておらず、シンセサイザーによるデジタルな作り。以前に雑誌のインタビューで読んだことがあるのだけれど、どうやら彼は約10年周期で生音が好きな時期、電子音が好きな時期と切り替わるらしい。
収録曲の中、細野晴臣氏曰く「右脳で作った曲」のT6『Riot In Lagos』はとりわけ人気のある名曲で、この曲はアフリカバンバータなどのヒップホップDJなどに注目されヒップホップの元祖とも言われている。今でもクラブで流れていてもなんの違和感もなく聞けるだろう。
T7『Not the 6 O'Clock News』は現代音楽の影響を多分に受けており、坂本龍一の幅の広さを感じられる曲だ。お気に入りの曲はT2の『Thatness And Thereness』そしてT3『Participation Mystique』あたりで、前者は奇妙なメロディと奇妙?な歌声が頭から離れなくなり、今ではこの曲が一番好きだ。後者はかなり攻撃的かつ難解なメロディで、この曲はテクノの皮をかぶったパンクだと私は思っている。
今年の秋にはリマスタリングされリリースされる予定のこのアルバム。全体的に鋭く尖った印象を持ち、教授の80年代の浮かれた空気に対して「俺は違う!」という思いを音から感じられる。
(By Koichi Yamamoto)
【製品情報】
Amazon価格:――
オリジナル盤発売:
アルバムジャケットはロシア構成主義のグラフィック・デザイナー、エル・リシツキーが1922年に発表した『2つの正方形の物語』からのサンプリング。

Posted by muzseek at
|
(0)
|
August 16, 2004
Gilles Peterson Worldwide Exclusives / V.A.
『Wheel Within A Wheel』試聴はこちら
(mp3)
Well, you see? We are scientists of sound. We mathematically put it down.
選曲にせよ、オープンなスピリットにせよ、ジャイルズ・ピーターソンのDJとしての能力云々以前に、バイアス・レスなその姿勢はリスナーに感銘を与えずにはおかない。音楽なんて白でも黒でも国でもない。英国BBC Radio Oneにおける彼のプログラムが銘打つ通り、 それはいつだってWorldWideである。
なにしろ彼の懐は深い。90年代初めにはアシッド・ジャズのDJとして認知されていた彼だが、選曲の幅の広さ、そして質の高さは、ジャンルを跨ぐ多くの国内外アーティストからの信頼を集めてきた。 WorldWiswでは年に何回かBrownswood Basementと題して彼の所蔵する膨大なオールド・ジャズのコレクションの一端が披露されたり、世界中から寄せられたホワイト盤(発売前のプロモ/サンプル盤)のみを2時間丸々使って紹介する時もある。先端と懐古、ブラックとホワイト、そんなジャンルや時代のギャップを彼は容易く越えていく。もちろん、根底に流れるのは果てしなく広い定義における”ジャズ”だ。
Gilles Peterson Presentsで既に何枚ものコンピレーションが出回っているが、今年発表された『Gilles Peterson WorldWide Exclusives』はトラックのすべてが本盤初収録という、まさにExclusiveな代物である。アーティストもMuzseekで以前紹介した馴染みの顔、Jazzanova、 Matthew Herbert、 2 Banks Of 4、 Domuの変名プロジェクトUmod、 Nicola Conte、 Build An Ark(彼らの作品も是非レビューしたい)、 Zero 7、 Gotan Projectと、とにかくゴージャス。
中でもCDではT1 The Cinematic Orchestra『A Wheel Within A Wheel』はオープニングに相応しい、重厚かつメロウな良トラック!冒頭の太く重いシンセベースのラインにゆっくりと重なるストリング・アンサンブルのメロディとローズ・ピアノの羊水のように柔らかく優しいバッキング。エンディングに向かう、ウィンドチャイムとリバース・エフェクトの後方で木管楽器のように響く幻想的なリード。生演奏を主体にしたこのグループの持つ魅力がエレクトロニクスと自在に戯れることで生まれた、極上の一曲だ。
軽快なMC(イギリス英語の訛りを身につけたかった…)とは真逆の、音楽への尽きせぬ愛と深い好奇心。まだまだ音楽の未来は信じられる、このアルバムにはそんなメッセージが溢れている。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥2,479-3,014
オリジナル盤発売:2004年
それにしてもJuno Recordsのサービスの細やかさといったら、凄いですね (ヴァイナル盤のスキャンまでしてくれてる)。
Posted by muzseek at
|
(0)
|
May 27, 2004
Up & Down / Domu
『Sail Away With Me』試聴はこちら
(mp3)
ビート・マニアックス
とにかく徹底的に突き詰める、総体よりも微小な一つ一つの要素を。 時にリスナーを混乱させかねないほどに作り込み、はぐらかし、ほとんど曲自体を飲みこんでしまうかのような…
DomuことDominic Stantonのビートへのこだわりは、そんな風に表現できる。
4heroのDegoが以前主宰していたEnforcersでは、Sonar Circle名義のシンコペーションのみで成り立っているかのような、それでいて独特のグルーヴを醸す清冽なトラックをプロデュースしてきた彼は現在まで多種多様な名義とレーベルを使い分け、エクレクティックな活動を続けている。 昨年はCompostからVolcovとのユニット、Rimaによるアルバム『This World』を、そして同郷のキーボード/ベース奏者Robert Martinと組んだBakuraではEP『Reach the Sky』、『Thinking About』を、Kyoto Jazz Massiveの主宰するEspecial Recordsからリリースしている。
そのサウンドはとにかくまずビートありき、である。 彼の1stアルバム『Up & Down』中のT5 Body Electric、続くT6 Marajadeあたりはまさに真骨頂と言える。 疾走感と突っ掛かるような変則気味のリズムがモーダルなコード進行やアナログ・シンセのモジュレーションをない交ぜにしながら駆ける。 T3 Sail Away With Me(Vo.はValerie Etienne)のような清涼なボーカルトラックにすら、メロディを突き崩すかのように複雑なビートを無理矢理でも敷いていく、彼の絶対的なエレクトロニック・ビートへの信仰。
機能性ばかりが重視されがちなクラブ・ミュージックにおいて、グルーブと実験性のラインをギリギリのところで折り合わせてやろう、という削り出しの気概が伺える。 もちろんその底流には彼のビートに寄せるこだわりと無邪気なほど嬉々とした精神があるのはいうまでもない。
この博士の狂った愛情に、これからも期待したい。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥2,625
オリジナル盤発売:2001年
で、 まぁ例によってAmazonに在庫が無かったりするんだけど…
いずれBakuraなども紹介したいと思っています。
Posted by muzseek at
|
(0)
|
May 17, 2004
Creating Patterns / 4hero
革新的であり続けることは、ひどく難しい。 時折無意味にすら感じる。 前方を見つめ続けること、 20世紀以降のアーティストに多少の差はあれ課されてきた、無謀なほどの進歩主義に応え続けること。 確かにそこから逃げずに立ち向かう人の姿はポップで美しい。
だけどそれだけで人は本当に前へ進んでいけるだろうか?
4heroはイングランド出身、DegoとMarc Macからなるユニットである。 1990年代初頭から半ばにかけて、Drum'n'Bassというジャンルを他のアーティストと共に確立してきたパイオニアの一員だ。 レゲェ/ヒップホップの倍速再生に特化したジャングルという叩き台、かれらはそこへもっと大きな可能性を持ち込み、最先端のジャンルへと進化させた。
勿論、どんな音楽もポップ・ミュージックである限り粗製濫造とコマーシャリズムで陳腐化していく。 Drum'n'Bassも例外ではなかった。 4heroが1998年に放ったアルバム『Two Pages』は、そうなれば最良であったはずのDrum'n'Bassの姿とその死を提示し、別の、全く新しい未来を予告して幕を閉じた。
以降、少数の例外を除いて彼らはDrum'n'Bassのプロダクションを行っていない。
3年前、一つの未来を連れた彼らが『Creating Patterns』をドロップした。 そこにはギラギラとサイバネティックな輝きを放つかつての世界は無く、かわりに過去と未来が間断なく立ち現れ暖かく混じり合う、オーガニックで新しいスタイルが産み落とされていた。
複雑に刻まれるサンプルされたビートと生ドラム/パーカッションの絶妙な配分、スモーキーなウッド・ベースのドライブ感と柔らかく包み込むストリング・アンサンブル/ローズ・ピアノの響き。 ここでは全てが刷新され、かつどこまでも「彼ら」である。 ミュージシャンにRoy Ayersを迎えてバリにファンクしてみたり、Minnie Ripertonの『Les Fleur』を結構そのままカバーしたり、過去を尊び、今に取り込むことで前に進んでいく、そんな確認作業が伺える。
もう一度、ここでは新しい時代が高らかに、謳われている。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥2,000-2,912
オリジナル盤発売:2001年
Posted by muzseek at
|
(1)
|
May 10, 2004
Between / Jazzanova
『Mwela, Mwela』試聴はこちら
(mp3)
The 21世紀スタンダード
1995年、DJ/プロデューサー集団としてスタートした Jazzanova 。彼らのファースト・リリース『Fedime's Flight』がヨーロッパを始めに世界的なヒットを放ち、当初はリッミクス業を中心とした活動を展開、不動の評価を得ていた。その作品群は既に『Jazzanova Remixes』としても発表されている。
ドイツ、ベルリンのローカル・シーンから、世界へ躍り出た彼らだが、ファースト・アルバムに懸かっていたプレッシャー、期待は尋常ではなかった。それまでのJazzanova的典型のスタイル、パーカッションを軸にした緻密でいてアップリフティングなトラック---4HeroやIncognito、そしてUFOなどのリミックスで名を馳せたあのカタチ---を踏襲するだろうことは多くのファンの想像に難くなかったはずだ。
だが待望の2002年、ドロップされたアルバムはさらにその先を行くものだった。
ブラック・ルーツとテクノロジーの完全で自然な融合。このアルバムは彼らの原点と、そして未来を伝えるにふさわしい仕上がりを見せる。一曲ごとにレビューしていたらきりがない。収められた17曲の21世紀スタンダードたちは全て、丁寧に磨かれ、配置され、織り込まれて一幅の壮麗なタペストリーを成している。参加ミュージシャンはヴィヴラフォンにDavid Friedmann、Clara Hill、2 Banks of 4のValerie Etienne、Ursula Rucker、 盟友Vikter Duplaix、そして日本からはHajime Yoshizawa a.k.a. Sleepwalker他多数。
ブラック・ミュージックを芯に据え、暖かくレトロな空気を漂わせつつも、複雑なプログラミングと構成を随所に施す、まさに00年代の音がここにある。"Music is not only black or white."。そう、これは新しい世紀のための音楽だ。
完璧主義と細部への徹底的なこだわり、音楽に対する妥協のない彼らの眼差しは常に、未来へ。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥2,073
オリジナル盤発売: 2002年
Posted by muzseek at
|
(1)
|
April 30, 2004
Soulhack / Forss
『Soulhack』試聴はこちら
(mp3)
機械vs人間
ドイツのDJ/プロデューサー集団、JazzanovaがCompostとともに主宰するSonar Kollektiv。コマーシャル的に肥大してしまった前者に較べ、非常に手作り感の高い作品、エッジの鋭いアーティストを次々に輩出している。過去一年のアルバム・リリースだけでも、Deyampert、Georg Levin、Meitz、Micatone、Reunion、Slope、そして一昨年リリースのJazzanova 『In Between』に参加のClara Hillと、レーベルのスタートから5年とは思えない程の勢いを見せた。
昨年のリリース・ラッシュの中でも同レーベルからForssの放ったデビュー作、『Soulhack』は特異なスモーキーさを醸し出していた。昨年の『Jazzanova Remixed』で、"Keep Falling"のリミックスを担当したスウェーデン出身の彼は、ブレイクビーツ+Jazzという、端的に言ってしまえばエレクトロニカにカテゴライズされるアーティストなのだろうが、それらの融合レベルの高さは凄まじい。
一貫しているのは、テンションの高いブレイクビーツ/スクラッチとそれに絡んでくるその他の音色の絶妙なバランスだ。ライブで演奏された部分とサンプル/デジタルな部分とが自然に溶けあい、決して機械的に陥いることなくオーガニックな感触を残している。毛色は違うがPrefuse 73あたりにも通ずる質感だ。
アルバム表題曲のT2はGilles Peterson 監修の『WorldWide 2』にも収録された、Forssの真骨頂たるトラック。Max/DSP的処理もほんのりと伺える柔らかなピアノのイントロから一転してザイロフォンを配したハードエッジなビートと骨太ウッド・ベースの入り乱れるブレイクへ。T3 『Funk for Nerds』でのビッグ・バンドとスクラッチをこともなげに織り込むその手法の豪放さも素晴らしい。彼がドラムンベース以降のアーティストであることを証明するT4 『Flickermood』、21世紀的エレクトロを垣間見せるT8 『Atomised』、そしてT11 『Tacit Knowledge』では又もビッグ・バンド・サウンドとダークなアンビエンスを壁に、それをブレイクに載せてゆく。ラスト・トラックT12 『Paradigm Sift』でのアブストラクトなサンプリングの使い方と生演奏のブレンディングも切れがあって良い。
Sonar Kollektivのサイトではアルバムの全曲が試聴出来る。彼らのレーベル・アーティストの作品に対する絶対の自信とリスナーへの誠意が伺えるだろう。
一昨年あたりからForssやCinematic Orchestraといったデジタル/アナログといった括りを凌駕するアーティストが出てきている。先日紹介した2 Banks of 4などもその範疇に入るだろうか。非常にエキサイティングなシーンが育ちつつあることは間違いない。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥1,951
オリジナル盤発売:2003年
Posted by muzseek at
|
(1)
|
April 21, 2004
Ultravisitor / Squarepusher
我が道を行くことの難しさね…
とにかく彼は音楽が好きなのだろう。所属レーベルであるWarpからのリリースだけでも軽く10を超え、勿論そこにはないAphex Twin主宰、Rephlex発のマテリアルもある。過去10年弱の活動から生み出された諸作の数々からは、音のクオリティ云々を創作の衝動とそのスピードが凌駕する様が見て取れる。これらがほぼ全てたった一人の人物によって(レコーディング、ミキシングも含めて、だ)作り上げられているのだから、SquarepusherことTom Jenkinsonの出所不明な多作振りには驚かされる。
数ある作品の中で、クリス・カニンガム監督(他にビョーク、マドンナなどクリップも手がける)のPVでスマッシュ・ヒットした『.common My Selector』収録、『Big Loada』の知名度が高いだろうか。実質デビュー作となった『Feed Me Weird Things』、フュージョン・ファンが食いついたせいでその後の方向性に多大な(マイナスの?)影響を残してしまったといわれる初期代表作、 『Hard Normal Daddy』も挙げておきたい。
ドラムンベースを軸に、ジャズ・フュージョン(=ジャコ・パス的)作法のテクニカルなエレ・ベースに様々な音響的加工を施し、さらにチープなシンセ/ドラムマシンをサンプラーでみじん切りにした後、ふんだんに散りばめる。お気に入り機材はTB-303とTR-707、そしてYAMAHA DX-21。サンプラー、ディレイ、フィルターを駆使して、出来上がるはスダンダードの概念から大きく外れた規格外品だ。
いつかのインタビューで、自分はまっとうなダンス・ミュージックを作っているのに、なぜあらゆるDJから無視されるのか?と嘆いていたけれど、今年発表のアルバム『Ultravisitor』、特にT3 『Iambic 9 Poetry』 は多方面に訴求力を持ったトラックだろう。メロウなチルアウトからスタートして徐々にSQP的カオス・グルーヴに突入していく一曲。彼のスタイルの典型とも言える。 T1 『Ultravisitor』 でのクレイジーに切り刻まれたビートと原型をとどめないベース・ライン。 Auteche、Richard James Album以降のAphex Twinに肩を並べる出色の出来だ。そして T4、T14そして T15で見せるロマン情緒全開の彼も見逃せない。なんといっても前作まで影を潜めていた、彼のどこまでもポップなメロディが前面に出てきている。
ポップ的メロウさとエレクトロニックの狂気。この二律背反的な姿勢が、彼を常にメインストリームから阻害している。翻ってみれば、そこに迎合や妥協は存在しない。我が道を行く過程で発生する犠牲や孤独を逃げること無く受け止めることで、彼は一歩ずつ、前進している。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥1,544
オリジナル盤発売:2004年
Posted by muzseek at
|
(1)
|
April 13, 2004
Introduction / Moodymann
『I Can't Kick This Feeling When It Hits』視聴はこちら
(Real Player)
アフリカ系アメリカ人が人口の70%以上で、1980年代アメリカ中から殺人都市と呼ばれるほどの犯罪率を誇る町、デトロイト出身のハウス・クリエイターmoodymannが今回の主役。自らを“不機嫌な男”と名乗るだけあって曲も独特の黒いオーラに包まれ、これが最高にかっこいい。
彼を中心とするデトロイトDeep Houseシーンは最近日本のクラブシーンで注目されている。彼の盟友Theo Parrishの来日イベントは2000人以上が西麻布yellowに集まり、その注目度の高さを示した。しかしmoodymann自身は日本人があまり好きではないらしく(理由は俺たちの音楽を真似しようとするから)、来日イベントもわざと週末を外すらしい。聞きたい奴だけ来ればいいというのである。そんな態度に惹かれる人も多いようだ。
音は基本的にローファイで独自の仕上がり、ざらついた感じを聞き手に与える。彼の音単体に対するこだわりは相当なもので、アルバム全体を通して感じられる。構成もミニマルで同じフレーズが淡々と続くのだが、独自の黒い雰囲気のなかに入り込めば心臓がドキドキしっぱなしだ。聞いていてスリリングである。「これがデトロイトか…」と感じられる作品。
(By Koichi Yamamoto)
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
【製品情報】
Amazon価格:¥1,741 (税込)
オリジナル盤発売日: 1997/11/18
Posted by muzseek at
|
(0)
|
April 12, 2004
GQ on the EQ++ / Kid 606
『Staying Home From School』視聴はこちら
(mp3)
“21世紀はオタクの時代”という噂を最近良く耳にする。例えば、六本木ヒルズでの村上隆、映画でいうなら『MATRIX』やタランティーノの『KILL BILL』あたりも完璧にオタク・カルチャーだ。――という訳で、今回紹介するのがJAPANIMATION(ジャパニーズアニメーション)と猫をこよなく愛し、アメリカ南東部出身「世紀の変態エレクトロニカ・アーティスト」Kid606。
日本に住んでいると意外と気付かないものだが、日本人の作るアニメと漫画は、外国人にとって相当エキセントリックでオリジナリティ溢れるもの。実際、筆者はイギリスに少々住んでいたのだが、そこであった現地の若い人はよく日本のアニメを知っていた。『Seven Stars Fist(邦題:北斗の拳)』、『ドラゴンボール(英題同じ)』に至っては専門店すらあった。さらには、私自身も知らない日本のアニメを知っている輩まで現れ、話に困った事すらある。
私たち日本人は、音楽にしろ、映画にしろ海外モノに憧れを抱いているのは確かな事だと思うが、外国人にしてみれば、なぜもっと自国の文化に誇りをもたないのか?と思うのだろう。
話がそれたので、kid606に戻る。この男はなかなかに手強い音楽家で、聞けばわかるが、音楽とカテゴライズする事に抵抗を覚えるような曲が多々ある。
T3『ginza』は名前の通り、銀座のどこかのお店で録音したと思われるわけのわからない会話をサンプリングしてそれをループさせその上に縦横無尽にシンセの音が駆け巡る。T4『Dandy』は音楽というよりは映像に近い曲だと思う。メロディは基本的にエモーショナルな感じがして心に訴えるモノがある。日本人はいわゆる泣きメロが好きだと思うが、おそらく彼もメロディに重点を置いているのだろう。
(By Koichi Yamamoto)
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
【製品情報】
Amazon価格:¥1,633
オリジナル盤発売:2001/06/19
Posted by muzseek at
|
(1)
|
March 27, 2004
Three Street Worlds / 2 Banks of 4
『One Day』試聴はこちら
(mp3)
誰もが一聴するだけでその素晴らしさの分かる、そんな音楽がある。
2003年はAcid Jazz復権の年(?)と呼べるほど、ヨーロッパ/クラブ廻りでJazz(もちろん広義の意味で)が盛り上がりをみせた。しかしホワイト(テスト)盤の段階で多数のDJ からプッシュされていた『One Day」収録のTwo Banks of Four アルバム『Three Street Worlds』の完成度は白眉であったといえる。
つい先日もGilles Petersonがレジデントを務めるプログラム、WorldWide Maida Valleに於いてスタジオ・ライブを披露したこのグループは、ロンドン在住のDJ、Dillip HarrisそしてRobert Gallagherによるプロジェクト。デビューは1999年。生楽器を基調にオーガニックでありつつも、そこへ絶妙なエレクトロニック要素を織り込み、現代的な音作りをも保っている。そして何より彼らの楽曲の質の高さは特筆に値するだろう。
T3 『One Day』はジャンルを超えてお薦めしたい一曲だ。力強いグルーブを打ち出すウッド・ベースのイントロからピアノとの絡み、ボーカルのValerie Etienneが歌い上げるメロディー、ウィンド/ホーンセクションの鳴らす熱いコーラス、後半のメインを張るサキソフォン・ソロと、書ききれない魅力を持ったトラックだ。同じくボーカルの魅力を堪能できるT7 『Unclaimed』、バンドが一体となって作り出すドライブ感にあふれるT4 『Banks of the Nile』、アルバムラストを飾る2bo4的ファンクネス全開のT12 『Rising』等、2003年のムーヴメントを総括する一作に仕上がっている。
『One Day』、『Unclaimed』は廻りでも人気が高い。メロディの良さがすぐに耳に馴染んでくるからかな。どちらも小難しいこと抜きに、聴いて心地よい曲。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥2,300
オリジナル盤発売:2003年
Posted by muzseek at
|
(0)
|
March 23, 2004
Feel It Out / Phuturistix
『Beautiful』試聴はこちら
(mp3)
未だ衰えること無く次々と新しいアーティストを生み出す、西ロンドンを中心としたブロークンビーツシーン。中でも本国イングランドからphusionistic beatsを掲げて活動を続けるデイヴ・ジョーンズのプロジェクト、Phuturistix。アルバム『Feel It Out』はアルバムの絡み合う手が表すように、細かに打ち込まれたビートと、70年代的とも言える暖かなソウル・サウンドを見事に融合、昇華させている。
ブロークンビーツて?といわれるとハウスて何、と聞かれるよりも説明につらいところだけど。色々端折って答えるなら、シンコペーション(1拍裏、4拍裏々とか)を多用するテッキーなエレクトロニック物全般、か。出所はD&BだとかいやいやUKガラージでしょ、など諸説あり。クセのあるイルマティックなビートにAcid Jazzyな展開なんかが典型的。結構複雑なトラックの多い中、音的には非常にコマーシャルなPhuturistix。Bugz in the Atticのリミックスも秀逸だったT2 Beautiful、T6 Theronious Punkでの管楽器の混ぜ具合、王道的なソウル・バラードを見事なストリング・アレンジでまとめたT9 Sunshine Lover、そしてAtjazzことMartin IvesonをフィーチャーしたT3 Beat Jerky。いずれも飽きのこないメロディーと奥深いアンサンブルを聴かせる好盤。
とにかく多作なジョーンズ氏。彼は他にいくつもの変名プロジェクトを抱えていて、有名なところでZed Bias、DJ Zinc、そしてMaddslinky、Es Dubs、S&Z、Da Luq。加えて膨大な量に上るリミックスワーク。その多作振りには舌を巻くしかない。それぞれのプロジェクトに確実なZed Bias印を残しつつ、十色に異なるスタイルを見せる仕事人。今年も彼の活動に期待したい。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥2,179
オリジナル盤発売:2003年
Posted by muzseek at
|
(0)
|
March 08, 2004
Protection / Massive Attack
『Protection』試聴はこちら
(mp3)
新作の『100th Window』にはちょっとしたトーンダウンを感じざるを得なかったけど、1st『Blue Lines』から『Mezzanine』に至るまでのマッシブ・アタックの道筋はかなりエキサイティングだ。それぞれのアルバムは一聴まるで異なった印象を聞き手に残す。にも拘らず、Reggae、Hip-Hopのゴツゴツとした要素をゲストらと共に一つのアルバムに溶かし込んでいくその手法、そして自らの音楽に対する純粋な姿勢は常に、一貫している。
2nd『Protection』(とコインの裏表をなす『No Protection』Remixed by Mad Professor)はプロデューサーにNellee Hooper、ゲストにEverything But the GirlのTracy Thorn、元同僚のTricky、Nicolette、そして今でも親交の深いHorace Andyと、鉄壁のメンツ。透明感のあるプロダクションと張りつめた緊張感。メンバーのMushroom(辞めちゃったけど)、Daddy G、Del Naja、三人の持つタレントをHooperが神業的にまとめあげている。
その音は10年経った今も褪せることなく、響く。
個人的にT1 Protection、T2 Karmakoma、そしてT4 Weather Stormは、自分がこの分野にハマり込むことになった決定的な曲でもあって、当時を色々と思い出す。初めて買ったサンプラーで最初に必死こいて打ち込んだのはProtectionだったし。今聴いてもやっぱヤバいよ、これ。スネアのゲート処理とか。トリップホップなんてジャンルもありましたな、そういえば。内ジャケのTB-303とかも「らしくて」良いよね。
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥1,862
オリジナル盤発売:1994年
Posted by muzseek at
|
(0)
|
February 23, 2004
The Remixes, 1997-2000 / Jazzanova
『We Who Are Not as Others』の試聴はこちら
(mp3)
ここNYでも昨今盛り上がりを見せ始めているいわゆるウェスト・ロンドン・サウンド/ブロークンビーツ。今回はその中心地の一つドイツ、ベルリンからCompost Recordsを主宰する重鎮、 Jazzanovaが2000年にドロップしたリミックスワークを。4Hero、Incognito、U.F.O.、MJ Cole、Soul Bossa Trio、Koopといったアーティスト達のトラックをきめ細かに、そして時には原形をとどめぬまでに再構築。CD2枚に及ぶ作品群のクオリティは未だに超一線級のレベルを保持している。
一昨年、待ちに待たされた1stアルバムをリリースしたJazzanova。 こちらはそれに先駆けること2年、 それまで手がけた彼らのリミックス仕事を一つにまとめたアルバムであります。 とにもかくにもT1、4Hero "We Who Are Not As Others"にやられる。最初に聞いたのは多分98年くらい、 同曲の12inch盤だったとように思う。これほどに生演奏と打ち込みを間断なく行き来するトラックを聴いたことが無かった。 今改めて聞き返してみてもその展開のスリリングさにゾクゾクする。 それぞれのアーティストのイメージを崩すこと無く、しかし一聴して彼らの仕事と分かる程独特の音作り。
レビューしたい曲は彼ら自身のものも含めて山ほどあるけれど、それは次回以降に…。
とにかく良トラック多数の一枚、 Incognito "Get Into My Groove"、 Koop "Absolute Space"は必聴! そしてアナログでは結構希少な(再発とかしたのかな?)、 Ian Pooley "What's Your Number"も収録。
リミックスにおける「今」を体現し、 多様なスタイルを苦もなく渡り歩く、 そしてなにより「良い曲」をさらに次の次元へと連れて行く彼ら。 サンプリングという手法が生み出した最も微細な音の迷宮へ。 Big Applouse for the Days to .come!
*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。
(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥1,700 - 2,210
オリジナル盤発売:2000年
Posted by muzseek at
|
(0)
|














