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August 18, 2004

John Cage: Sonatas and Interludes / Philipp Vandre

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『Sonata V』試聴はこちらmusic.gif(mp3)

音楽とフィクションにまつわるエトセトラ

ジョン・ケージの名前を、音楽史を少しでもかじったことのある人なら知っていることだろう。有名なところでは沈黙(音楽におけるTacet。ただし『演奏以外の行為』なら何をしても良い)を主題にした『4分33秒』を作曲(?)した奇天烈な作曲家。様々な非音楽的道具を自らの楽曲に持ち込み、プリペアド・ピアノの手法(実のところ発案は彼ではないのだが)を開発した発明家。中国の易その他(中にはチェスのゲームなんてものもある)による不確定性を音楽に初めて導入した実験者。その他挙げれば次々と出てくる彼の自家中毒ともとれる極端な多面性からはしかし、一貫した「音楽って一体なんだ?」という問いに対するその時々での答えの積み重ねと、そこから生まれる可能性の提示が見てとれる。

音楽的なことは脇にのけておいて、音だけに耳を澄ませてみよう。 プリペアドピアノを例にすれば、その音色の非ピアノ的なことは疑うべくもない。それはピアノ線に挟まれた様々のネジや布、紙や竹といった異物によって本来の音を剥がれ、ガムランのように金属とも木管ともとれない独特のトーンを生む。気まぐれも過ぎるというか、最後には雪の塊まで置いたというからその奇人ぶりは堂に入っている。そしてこの西洋最強の楽器は自律性を失い、全く別の音世界を創造し始める。音階やコードなどといった音律は曖昧模糊とした響きそのものの中へ霧散していく。 ケージの分かりやすいアヴァンギャルドさは当時の難解に行き詰まった西洋知性そのもに向けられ、そこに気持ちのいい風穴を空けた。

元は30年代に米国滞在中だったシェーンベルグに師事した彼。このアルバム 『Sonatas and Interludes』 に収められた楽曲の軽やかさからも、確かにヨーロッパ伝統からのシリアリズム的影響が少し、感じられる。 アカデミックで、まだちょっと堅苦しい。 冒頭で述べたように、彼の諸作はとにかくこの作品以上に驚きと予想も出来ない手法とで彩られている。 同じフレーズを840回繰り返すことで成立する 『ヴェクサシオン』 、テルミン的グライド効果を生むために2台のターンテーブルを用いる(!)正弦波のレコードを使ったピアノとパーカッションのための曲、ステージでピアノを電ノコで破壊する作品、 『架空の風景』 ではテープや12台のラジオを曲に使った。 さらに一旦演奏を始めると24時間以上の時間を要するという曲まであった。 とにかく彼は前例の無い手法で結果の予想できない音楽を目指していたのだ。

彼の活動を辿ってみると、それはもはや作曲とも呼べないかもしれない。 では、とケージは問うだろう「そもそも音楽というのはなんなのでしょう?」と。 バカバカしいほど生真面目にそれを追求した彼の哲学はライヒ、グラス、ジョン・ゾーンらダウンタウン・スクール勢、イーノやサン・ラーといった音響派/ジャズ、そしてベック、レディオヘッド、コーネリアスらポップ勢まで、その後多くのアーティストに受け継がれた。 

沈黙とはフィクションだ、と言い放つことで音楽そのものを解放したジョン・ケージ。  4分33秒から始まった長く真白なこの道はまだ、遥か遠くへと続いている。

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(By Yuichi Okada )

【製品情報】
Amazon価格: ¥2,095
オリジナル盤発売:1996年

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May 21, 2004

Eureka / Jim o'Rourke

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『Prelude to 110 or 220/Women of the World』試聴はこちらmusic.gif(Real Player)

股間に人形を擦りつけ、切ないほど色っぽい顔をする親父。このアルバムのジャケット<拡大>を初めてみた時すごい不快感が込み上げてきたのを思い出す。

しかし、そのジャケットとは対極を成す彼の美しいメロディに聴いてみて心の底から感動した。

Jim o'Rourkeはシカゴ出身のギタリスト、プロデューサー、エンジニアいろんな肩書きを持つアーティストで、現在はSONIC YOUTHというロックバンドの正式メンバーにもなっている。

このアルバム『Eureka(ユリイカ)』の影響力は計り知れず、見たことはないが青山真治監督作品『ユリイカ』のタイトルはこのアルバムから引用したらしい(主演の役所広司もびっくりだ)。どうやら日本が大好きな人のようで、続く2001年にリリースした『Insignificance』ジャケット>も同様ジャケットは漫画家『友沢ミミヨ』が手掛けている。

まず聴いて耳に残るのがT1『prelude to 110 or 220/women of the world』、そしてT7『eureka』だ。T1はほとんどが同じフレーズの繰り返しなのだが、後半になるに連れて音数がどんどん増えていき、気付いたらトランス状態とも言うべきか音にもっていかれてしまう。
T7でもゆっくりと弾かれたギターループの上に優しいシンセサイザーの音が徐々に増えていき、クライマックスは壮大で感動すら覚える。音はとにかく繊細で彼の非凡なセンスが感じられる。

タイトルの『Eureka』とはアルキメデスが浮力の原理を発見した時に叫んだ、「見つけた!, わかった!, しめた! (米国 California州の標語)」という意味を持つ言葉。このアルバムを聴いたあなたにも何か新しい発見があるかもしれない。

(By Koichi Yamamoto)

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【製品情報】
Amazon価格:¥1,922 (税込)
オリジナル盤発売日:1999/03/02

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April 15, 2004

Mokoondi / Mice Parade

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『Open Air Dance』視聴はこちらmusic.gif(Real Player)

昨今はコンピューターテクノロジーの発達のおかげで、ほとんどすべてと言っていいほどの音楽が何らかの形でパソコンに関わっている。ダンスミュージックの発展は、すなわちコンピューターテクノロジーの発展と置き換えてもいいだろう。しかし、それはある意味で音楽を人間の身近なものから遠ざけているのではないか…?

それを訴えているかのごとく、頑にパソコンから距離を置くミュージシャンが今回紹介するMice ParadeことAdam Pierceである。

彼はNYを拠点に活動するバンドThe Dylan Groupのドラマー。Mice Paradeは彼のソロワークであり、すべてのパートが彼の生演奏(一発どり)で成り立っている。当然一発どりなのでミスをする事もあるが、それすらもそのまま使ってしまうところが彼のこだわりなのだと思う。

彼はドラマーということもあり、曲も必然的にリズムが重視されている。曲の中にはドラムが3つ使われている曲もあったりした。彼のドラムは個性的で、つんのめるような感覚を味わう事ができる。グルービーで疾走するような感じとでも言うべきか、ドラマーの人には是非聞いていただきたいと思う次第。

音楽の基本的な構成はジャズであり、複雑なビートとこれまた複雑な上音が重なりあっている。左のドラム3拍子、右のドラム4拍子、上音7拍子などとにかく複雑で、最初聞いた時は意味が分からなかったが、その中に隠れているグルーヴを発見する事ができた時、彼の虜になってしまった。

このアルバムは通算3枚目になり、前2作と比べるとますます複雑な構成になっている。彼はポップミュージックが大嫌いらしく、その音楽シーンに対するアンチテーゼ的な意味合いが込められていると本人はインタビューで言っていた。

メロディの方は上音にビブラホォン、ギター、中国琴、フェンダーローズなどを使っていて非常に優しい感じになっている。どこかアジアを彷佛させるような暖かく、この点は非常に聞きやすくなっている。しかし、彼の音楽は好き嫌いがはっきり別れるので、あなたの耳で是非判断してもらいたい。

(By Koichi Yamamoto)

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【製品情報】
Amazon価格:¥1,524
オリジナル盤発売:(2001/03/06)

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April 01, 2004

Green World / Brian Eno

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『The Big Ship』視聴はこちらmusic.gif(Real Player推奨)

1975年自動車事故で軽傷を負い、身動きするのが面倒だったイーノ。ベッドで友人が持ってきたハープのレコード音は片チャンネルしか出ず、しかもとても小さな音量だった。仕方なくそのままの状態で聞き続ける。その時、外の雨音の隙間を縫って時々聞こえるその微かな音楽が、音楽というよりむしろ環境の一部をなすものとして現れ、彼は音楽の一つの形を見出すに至った…。これがブライアン・イーノの生んだAmbient(アンビエント)というジャンル誕生の瞬間である。

ブライアン・イーノ、彼は70年代初頭Roxy Musicというバンドのサウンド・エンジニアとしてシーンに現れ、脱退後自らの音楽を追究し続けることで数々の名盤を生み出した。彼の活動は多岐にわたり、一言で音楽家といってしまう事も躊躇してしまうほどだ。本も執筆しているし、自分の求める音楽を作るためにその音楽を作るソフトを開発したりもしている。そのソフトを用いて音楽を再生すると一度として同じ音にはならないという。

ちなみにWindows 95『The MicroSoft Sound』の起動音を作ったのも彼。今や世界的なロックバンドU2David Bowieをプロデュースしたのも彼である。ブライアン・イーノの影響を受けた音楽家は数知れず、その影響力はこのレビューを読んでいるあなたの手元のCDにも必ずどこかで関係しているだろう。

今回紹介するCDは、アンビエント・ミュージックを完成させる以前の作品で1975年に世に出た。中身を簡単に言えばイーノ音楽の過渡期だろう。このアルバムの中には、初期のロック的な音楽と後のアンビエント・ミュージックの片鱗を垣間みる事ができる。『Another Green World』というタイトルから想像できるように不思議な作品にしあがっている。インストと歌ものが半々で収録されていてイーノの“ふにゃふにゃしたヴォーカル”が聞けるのがおもしろい。しかし、個人的には圧倒的にインストのほうがかっこいいと思う。T5『The Big Ship』、T11『Becalmed』、T12『Zawinul』は時代を超越しており、2004年の今聞いてもなんの古さも感じさせない。

人間の強さ、弱さ、哀しさ、美しさを感じさせてくれるこの作品。そしてブライアン・イーノ、一生色褪せる事はないでしょう。

(By Koichi Yamamoto)

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【製品情報】

Amazon価格:¥1,416
オリジナル盤発売:(1987/05/18)

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February 26, 2004

Electric Counterpoint / Steve Reich

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『Electric Counterpoint』試聴はこちらmusic.gif(mp3)

クラシックと言われて最初に何を思い浮かべるだろう。ちょとした音楽通?偏屈で退屈な音楽?小学校の頃のピアノレッスン?音楽を知る人も知らない人もベートーベンやモーツァルトは知っている。でも今何となく近寄りがたいのは、シーン全体がそこいら中に垣根を作ってしまっているせいかな。

それはともかく…

スティーブ・ライヒは60年代に入って「ミニマリズム」という手法をアカデミックに持ち込んだ、いわゆるところの実験音楽家。そう、今どき色々な分野に定着している「単一のパターン(の繰り返し/変化)」というやつだ。ハウス、テクノだってその遠いご先祖にはこの人の諸作品が並ぶ。確かに普通のポップミュージックのようには聴こえないかもしれない。でもスーツを着込んで固いシートにしゃっちょこばって座っている必要も無い、彼が作るのはそんな音楽だ。人力リピートの作り出す、不思議なグルーブを持った音楽。クラシックという土壌に育ったライヒはそれでいて自在だ。

そうだな、春もしくは少し涼しい夏の夜なんかにカウチでウトウトしながら…

『It's Gonna Rain』『18人の音楽家のための音楽』のような玄人向け、ハードコアな作品もあるけれど、『ライヒ入門』なんてハウツー物はちょっとあざといよねぇ…。ということで彼がパット・メセニーと共作した『Electric Counterpoint』。ギターによって個々のフレーズが段々と積み重ねられて、一つの曲を作り上げ、出来上がったように見える曲は繰り返されるフレーズのわずかな変化で表情を変える。3部構成、特にラストは印象に残る。このフレーズはアンビエント・テクノ(懐かしいね)の王様、the Orbの手で、「Little Fluffy Clouds」 という稀代の名曲に生まれ変ることになるんだけど、オリジナルの”静謐な熱”、とでもいうような手触りはやはり代え難い。

何も難しいことは無い。僕たちは今ここにあるクラシックを、聴こう。

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(By Yuichi Okada )

【製品情報】
Amazon価格: ¥1,845
オリジナル盤発売:1990年

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