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July 20, 2004
Loveless / My Bloody Valentine
『To Here Knows When』試聴はこちら
(mp3)
トランスルーセントもしくはワールド・イズ・マイン
完璧な世界がある。全ての物があるべきところに収まり、ほんの少しの必要も不要も無い。ジョン・ケージあたりに言わせればそんなものは只のフィクションでしかなく、人の生きる限りまつわりつく業なのだろうけれど、とにかくアートは常にそんな世界を夢見てきた。
そしてロックという音楽も例外なくそうだった。ギター、ベース、ドラム、そしてボーカル。今となっては非常に保守的な、そんな古色なスタイルをしかし極限まで追い詰めた音を、エンターテイメントの囲いの外へ。そんな精神がいつの時代にもある。
アイルランド、ダブリンにて結成されたバンドMy Bloody Valentineは、Kevin Shieldsを中心に度々メンバーを替えつつ何枚かの冴えないEPをリリースしていた。1987年にヴォーカリストとしてBilinda Butcher迎え、当時まだインディー・レーベルの一派だったクリエイションと契約したあたりでバンンドの方向性は定まり、1st アルバム『Isn't Anything』をリリース。ライブ中、足下を見つめてギターをかき鳴らす姿からShoegazerと呼ばれる内省的なスタイルを確立した。しかしこのときの彼らはまだ以前からのJesus & Mary Chain的轟音ギターの地平にあった。
91年、『Loveless』発表。
ロックという枠を超え、それ自身のための孤高の場を創造したこの作品には、ケヴィン・シールズの異常ともいえるほどに完璧な音世界が詰め込まれている。一聴それはただのギター・ノイズかもしれない。だが一つ一つの音は他の音と美しく溶解し、半透明で暖かな結晶として在る。それまでのロックにおいて一面的にしか扱われてこなかったノイズたちがここでは生命として脈を打ち、分厚く蠢く。メロディーはその音の海間にゆったりと混じり合う。そしてこれら全てが、たった幾つかの楽器と声によって(勿論一本ではないだろうが)生まれでてくることの驚き。
このアルバムがシーンに与えた影響は語うるべくもない。 ロックという音楽は、この作品によってある極限を向かえてしまったのだから。多くのフォロワーが彼らの後に続いた。Slowdive、Chapter house、Ride、そして現在もPia FrausやMono、他一連のギター系音響グループらにその軌跡が窺える。
だが10余年を経た今も、『Loveless』の持つ鮮やかな光彩は失われていない。
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(By Yuichi Okada )
【製品情報】
Amazon価格: ¥980 (そんなに安いのか…)
オリジナル盤発売:1991年
From the Alternative Point of View
技術的に見てみれば、マイブラの、翻ってケヴィン・シールズのこの時期のミキシングはまだ未熟だ。トラックによってはあからさまに?なバランスの物もある。けれどギターを使った音響的な着想の見事さは凄いの一言だ。さすがに20人を超えるエンジニアと5000万とも言われるバジェット(実際当時のインディーズとしてはあり得ない額の予算。これのせいでクリエイションは一時期潰れる寸前だった。Oasisの成功のおかげでようやく持ち直したそうだ)をかけただけある?
典型的なマイブラ・サウンドといえるT4 To Here Knows Whenではそれが如何無く発揮されている。冒頭に鳴っているフルート的な音、背後で通奏低音のように響く音、アームを使ったドローンサウンド、全てギターである。EQの加減で足りない帯域(特に中低域)を全てギターやそのフィードバックで埋めてしまう、ある意味でフィル・スペクター的ウォール・オブ・サウンドだ。このへんはJesus & Mary Chainも同様のやり方をしている。全体的なミキシングとしてはドラムやボーカルを常に後ろへ置く、非常に非ロック的な作りでもある。
ドラムといえば、ケヴィンは幾つかのトラックで一度録ったドラムが気に入らず、ドラムを全てサンプラーでばらし、打ち込み直すなど、かなりな偏質的にこだわっていたらしい。録り直せよ…。ラスト・トラックのT11 Soonでその後のプライマルとの絡みも納得のマンチェスター・サウンドも登場するあたり、結構その手の機材には詳しかったのか。
以前読んだケヴィン本人のインタヴューによると、音圧のことで彼は常に頭を悩ましたそうだ。なのかどうか、コンプの使い方なぞは結構無茶苦茶だったりする。マイブラのトラックは基本的に今流行のガッツリと全体に掛けるコンプで音圧を出していない。潰したギター/ノイズ/その他ををパニングとコーラス/リヴァーブを使ってあの分厚い音像を作っているのが分かる。アコギを潰してクリーンな方と共に左右へ配置して片方をリズムのアタックのみでパーカッション的に使うなど(T8 Sometimes)、工夫が施されていて面白い。意外にもリヴァーブはそれほど深めにかけず、使われるギターの本数も実は多くない(一曲につき5、6本)。逆にボーカルは何本ものテイクを重ねてあの独特のコーラス効果を作ったという。
とにかく再結成の話題は尽きない。今年もLost in Translationの盛り上がりもあって、ながらく廃盤のシングルBサイド集が出るとAmazonなんかでも予約受付していたけど、結局立ち消えになってしまった、残念…
Posted by muzseek at July 20, 2004 03:52 PM
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