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June 27, 2004

iPod + iTunes / Apple

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音楽のためのアカルイミライ

時代は流れに流れる。母のお気に入りレコードをボロボロにして怒られたのはほんの20年前、世にコンパクト・ディスクなるものが産声を上げて間もない頃だ。デジタルという名の下に、CDはレコードを、 MDはカセット・テープを、劣化媒体として駆逐した (ヴァイナルはツールとして生き残ったけれど)。

そして2001年より、新しいムーブメントが起きている。

Appleがデジタル・ジュークボックスと銘打ってiTunesを発表したのは3年前の2001年、同年にiPodも発売された。コンピュータとネットを駆使したもう一つの音楽媒体の誕生である。

今、NYで地下鉄に乗ったとしよう。大げさではなく、乗客の手にあるガジェットで携帯電話の次に目につくのはPDAでもCDウォークマンでもない。真っ白なイヤフォンだ。それほどに、 iPod(= iTunes) はコア・ユーザーを越えて一般層に浸透してきている。このiTunes + iPodがAppleの中核を成す程の分野に成長することを確信していたのはリリース当時、スティーブ・ジョブズCEOくらいであったろうか。

その要因は?となると、もうこれは使ってもらうしかないーーーーCDをドライブに入れ、iTunesに読み込む。当然、トラックやアーティストの名前はiTunesがネットから探してきてくれる。もしiPodを持っているなら、今取り込んだトラックを転送しておく。設定次第でこれら全てを自動化することも可能だ。所要時間はマシンの性能によるけれど、コーヒーを作って、飲む頃には終わっている。そしてiPodを取り外して、外に出る。誇張でもなんでもなしに、『Music In, Music Out』だ。

たったこれだけ、と思うだろうか。でも筆者と同年代以上で、「カセット」Walkmanを使っていた方には(若人にはNetが付く前のMDなんかを想像してもらおう)、音楽を外へ連れていくのがiPodに較べていかに面倒か、理解してもらえるはずだ。

勿論、過去にこういった類いのソフトウェア/ガジェット(例えばCD->MP3)は数多くあった。有名どころでいえばWindows Media Player(WMP)やWinAmpRioやSonyのNetWalkmanだろうか。だが、ユーザビリティとシンプルさを兼ね備え、かつソフト/ハードウェアをシームレスに繋ぐ、そんなシステムは皆無だった。iTunesとiPodの連携の見事さは間違いなく音楽のState of the Artだ。さらにiPodの存在を抜きにしても、iTunesは単体の音楽アプリケーションとして非常に優れている、と強調しておこう。

iTunesはWindowsヴァージョンも用意されている。4.6からWMAフォーマット変換に対応したことでWMPからの乗り換えも容易となった。

iTunesの軽快な操作性、そしてiPodが生む音楽遍在化の実現。2003年、USA iTunes Music Store(つい先頃ヨーロッパ、イギリスでも始動)の開始によって、Appleは音楽コンテンツまでもユビキュタスに成らしめた。今夏に於けるDeveloper's Conferenceで新型iPod発表の噂も聞かれる。まだまだ先があるのだ。

Appleの垣間見る音楽のミライは、明るい。

*iTunes: ダウンロードはこちらをクリック。

*iPod: こちらをクリックするとamazonから購入できます。

(By Yuichi Okada )

【製品情報】iTunes for Mac & Windows
価格: Free
発表:2001年(現在 Ver. 4.6)

【製品情報】iPod 15GB
Amazon価格: ¥33,390
発売:2003年

閑話休題と逆の観察ポイントから

しばらくぶりに読み返して、これじゃまるで提灯記事なので、もう少し…

もちろん、この会社には清濁色々アレがある。初期不良の多さとか、顧客の囲い込み方とか、ソフト開発がいちいち打算的なところとか(個人的にはWin版のLogic打ち切りが痛かった)。今回に限った話で言えば、結局のところiTMS単体ではiPodのための宣伝以上の利益は生み出しえないことを、ジョブズもほのめかしていた。

ただそういった企業間/内での批判など、ユーザーとはまた別のところで起こっている話で、この会社の規模からいって上に挙げたような事柄は当然の戦略だろうし、提供される製品/サービスの出来とは関係がない。著作権との絡みでなかなか身動きのとれない日本の現状ではまだまだ実現は難しいが、iPod+iTunes+iTMSが相当に優秀なビジネスモデルであることも疑う余地がないのだ。ソフトだけ、ハードだけでこの商売は成り立たない。他社が二の足を踏むのも、そのバランス/ブランド戦略がいかに難しいかを物語っているように思う。

ちなみにiTMS ヨーロッパは最初の週で80万曲を売り上げたそうだ。

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June 19, 2004

Elis & tom / Elis Regina

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『三月の水』試聴はこちらmusic.gif(mp3)

薔薇に降る雨

ブラジルが生み落とし、世界中でそのポピュラリティを獲得したボサノヴァ。50年という歴史の中で、それ自体は次第に変容していき、結果としてブラジルに多様なポップの種を蒔いた。現在のブラジルでは古色蒼然としたジャンルとして扱われているというが…

ボサノヴァ創成者の一人でもあり、数々のスタンダードを送り出したアントニオ・カルロス/トム・ジョビンと、初期ブラジリアン・ポップ・ミュージック(MPB)の代表歌手、ブラジルの誇るディーヴァ、エリス・レジーナ。1974年発表のアルバム『Elis e Tom』で、この二人が共演している。

実は60年代にMPBを巡って多少の確執があった二人。だがそんな時期を過ぎた後のひたすらにリラックスした様子がこのアルバムからは伝わってくる。明るめのトラックあり、メランコリックなトラックあり、非常な充足感をもった作品だ。

T1のデュエット『三月の水』が良い。ジョビンの歌手としての力量は…だが。前回紹介のジョアンのヴァージョンが頑なにストイックであるのと非常に対照的である。名曲T5 『Triste』、T6 『Corcovado]』におけるエリスの歌心に溢れたヴォーカルも、T13 『Chovendo Na Roseira(薔薇に降る雨)』でのアンサンブルとの一体感の見事さも、全てがしっくりとあるべき場所に収まっている。

エリス、ジョビン、今は共に亡し…

3月というとブラジルでは夏の終わりでもある。『三月の水』は、実のところ雨を意味しているのではないか、とも聞く。じっとり蒸し暑い夏の午後、少し肌寒いくらいの雨の日、いずれにしてもエリスの歌声とジョビンのピアノが気温を正しく25℃に整えてくれるだろう。

*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。


(By Yuichi Okada )

【製品情報】
Amazon価格: ¥2,034
オリジナル盤発売:1974年

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June 17, 2004

選ぶ音楽2 -ジャンル分けをめぐる課題-

[ Essay ]

Brian Enoの音楽をどのカテゴリーに入れるのが適当か?と当サイトから質問を受けたのが、私がこの一連のエッセイを寄稿するきっかけだった。

EnoといえばU2David BowieTalking HeadsLaurie Anderson等のヒットアルバムに前衛的なコンセプトや音響処理によるマジックを与えたと言われるプロデューサーであるばかりでなく、Ambient(=環境の一部として聴く音楽)という既にシーンの中の一ジャンルとして語られる様式の旗手でもあり、複数のプロジェクターによる映像や、テープループ、自動作曲の装置を組み合わせた現代美術的なインスタレーションは、催される世界各地で見るものに新鮮な感慨を与えている。

当然彼にも商業上の何らかの場を割かない訳にいかないにはせよ、ジャンルという便宜的な区分から逸脱したその才能の在り方に一つの冠詞を付してしまえば、本来どの作品にも共通して聞く事が出来る、優れた思想やその時代毎の変遷に注視してみるという、リスナーの営みを妨げる事にもなりかねない。

そこで私がMuzseekに具体的に提案したのは、ショップや雑誌のCDレビューで一般的に採られる、Enoの個々の作品をAmbientやRockというジャンルに分類する方法に加え、その全てをClassic/Modernのカテゴリーにも重複させて入れる事だった。

何故かと言えば、Enoは元々Art Schoolの出身で、アーティストとしてもミュージシャンとしても同時代の芸術に革命をもたらしたと言われるJohn Cageの思想に多くを負っている。その意味で、Enoについてはスター達との華やかなコラボレーションがジャーナリスティックに語られるが、理論と実技のメチエを長く厳格に伝え、その上に技術革新が生されてきた西欧の伝統音楽の中での前衛的な音楽家としても、注目に値するからだ。

このように一般のジャンル分けにコンテクストを補ってみれば、例えば西欧の伝統音楽を理論的なフレームとしているPopsやRock、Jazz等々はもちろん、他の多くの音楽とも、差異や近似性についてより多くの見方から鑑賞し楽しむ事ができるだろう。

(次回は黒人音楽と細分化した個々のジャンルにまつわる神話について、フランクに論じてみたい。)

Copyright © 2004, Ko Yoshimura. All rights reserved.

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June 15, 2004

take me aosis Brazilian Cafe ~ MENTHOL / V.A.

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『But Not For Me』試聴はこちらmusic.gif(Real Player)

カフェ・ブームがあった2001年に渋谷、青山を中心として人気を博したBrazilian Caféシリーズの第2弾がこの『MENTHOL』。現在は『Driving Around Town』『太陽とワイン気分』など10タイトルにも及ぶ大人気コンピレーション・アルバムだ。

“夏”というキーワードにしてしまうと、シリーズどのタイトルも該当してしまい選択に迷うのだが、涼しくBGMとして聞けるのはやはり『MENTHOL』で決まり。日本の夏はジメジメとしてるのでね…。

個人的にオススメは、清涼感と色っぽさの2つを併せ持つPamela Driggsのヴォーカル
T9『But Not For Me』。あと、最強ドライブチューン『I THOUGHT IT WAS YOU』のREMIXがT3に収録されていてるので、これも注目だ。

聴く時間帯は、やはり日中AM7:00~PM5:00ぐらいが適当。ドライブやデート、朝起きて聴くなどシチュエーションとしての使い勝手がとてもいいから、この季節、手放さずに持っていたい。

(By Koichi, I)

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【製品情報】
Amazon価格:――
オリジナル盤発売:2002.9.21

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June 12, 2004

Love Is Hell / Ryan Adams

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『This House Is Not For Sale』試聴はこちらmusic.gif(Real Player)

自らを気まぐれな多産家ともよんでいるライアン・アダムスの『Love Is Hell』を紹介。もともと2003年にレコード会社の都合で別々のEPとして発売したが、先月にその2枚に収録されてた全曲(4曲作り直し)+『Rock N Roll』収録の『Does Anybody Want To Take Me Home』を加え再リリースとなった。

ライアンのどこが好きと聞かれたら、彼の生々しい感情のこもった声と天から舞い降りたギフトのような美しいメロディーを持つ純粋なLove Songだと思う。前作の『Gold』『Demolition』からファンになってしまったのだが、今回の作品は今までにないライアンの自由でバラエティーに富んだ歌声が聴ける。純粋で哀しげに叫ぶ声にはいつも耳が奪われる。

従来のカントリーテイストなアコースティックの弾き語りはもちろん、どんなタイプの楽曲でも自分のものとして消化し、吐き出してしまう多才ぶりには、本当にアーティストとして尊敬してしまう。T6にはOASISのカヴァーとなる『Wonder wall』が収録されているが、原曲とは違った輝きを放っているので、是非OASIS好きの人にも聞いて欲しい。

この2つのアルバムには、有名なアーティスト達がいつも宿泊していたといわれるチェルシーホテルが1つのキーワードとして歌詞に何度か登場する。T3『This house is not for sale』ではまるで“自分が幽霊にでもなったかの様”な、またT14『English Girls Approximately』では“イギリスの女の子をからかう様”な歌詞の世界も、不思議でユーモアのあるものが多く自分でいろんな想像して楽しむのもなかなかいい。

(By Kay from OCEANLANE

*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。

【製品情報】
Amazon価格:¥1,626 (税込)
CD発売:(2004/05/04)

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June 09, 2004

Homebase / DJ Jazzy Jeff & Fresh Prince

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『Summertime』試聴はこちらmusic.gif(Real Player)

「夏がく~れば思い出す~♪」ってな具合に、T2『Summertime』はこの季節DJ達がクラブで挙ってかける定番中の定番ソング。夏を狙った曲は数々あれど、ジャンルを超え、国を超え、時代を超えて、こんなに成功した曲はないだろう。

Kool & The Gang『Summermadness』(これまた定番)をネタとして使い、サビに入る女性ヴォーカルのハマリ具合、そしてイントロの「ア~~イ!」と、もう言うことなし!

Jazzy Jeff & Fresh Prince、このユニット名で解散(?)してもう何年経つのかわからないくらい懐かしいが、現在は両者ともアングラ、ミーハーと互いの道で活躍している。

まずJazzy Jeff、彼はトランス・フォーマーというDJミキサーのクロス・フェーダーを小刻みに左右へON⇔OFFと動かしスクラッチの音を出す技の開発者。もともとDJとしての実力、人気ともに申し分なく、Nuyorican Soulなど他ジャンルのアーティストのアルバムにも参加したり、自分のDJスキルを使って多岐にわたり活動している。最近は、『Hip Hop Forever, Vol.2』というMIX CDを出したようだ。

そしてもう一人のFresh Prince a.k.a. Will Smith。説明不要だと思うが、ラッパーであり、タレント、映画俳優の大人気マルチタレントだ。最近DVDが出た『Bad Boys 2』も好調のよう。

今思うと、何故彼らがユニットを組んでいたかちょっと不思議だが(同じフィラデルフィア出身の幼な友達なんだけど)、終始ポップなHip Hopを一貫し、どんだけ「セルアウトだ!」とバッシングをされてもめげずにHip Hop、Rapの大衆化へ大きく貢献したことは事実だ。

今回の曲『Summer Time』とともに、そんなことを知っておいて損はない。

(By Koichi, I)

*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。

『Summer Time』Lyrics

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June 06, 2004

Millions Now Living Will Never Die / Tortoise

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『Gamera』試聴はこちらmusic.gif(mp3)

ロックというのは不可解な音楽だ。 ひたすらレーベル(レッテルというのか、この場合)を嫌い、全てに向かって「NO!」というサインをスプレイでまき散らしながら、自らは常に過剰なコマーシャリズムの末に瓦解し、そして再構築する。 その度に何かスリリングなことが起こる。

そう、Tortoiseをロックにカテゴライズすべきなのかどうか?このシカゴ出身の5人組のグループ、基本フォーマットは保守的なほどロックだ。 ギターを中心にして、100人中100人が ”バンドだ” と思うだろう、そんな編成である。

だが彼らの音楽的素養 (全員が複数の楽器を担当する) やサイドプロジェクトの充実ぶりは他のバンドにはあまり見受けられない。 特にキーパーソンであり、ドラムを中心にプロデュース業まで手がけるJohn McEntireはSea and Cakeで同じくドラム/音響を担当、自身のスタジオ ”Soma Electronic Studio” を運営するエンジニアでもある。

マッケンタイアの眼差しはロック的とは言い難い 「音そのもの」 に注がれている。 曲のある箇所ではビートが捩じれ、壊れ、一方でギターやベースがフィルターを通って別の楽器/音響装置に成り果てたり、柔らかく響くヴィブラフォンの残響音が解像度の低いエイリアス・ノイズにまみれていたりする。 それでいて決してアート/エクスペリメンタルに陥らない、ギリギリのラインでこうした要素を聴かせる。

Millions Now Living Will Never Die』はTortoiseが96年に発表し、シカゴ/音響系とも称されるジャンルを確立した、2枚目のアルバムだ。 ロックの持つダイナミズムやメロディ性を保ちつつも、前作から続く独自の音響実験をさらに推し進めている。

T1の20分に及ぶ『Djed』の、ゆったりと変容する展開の巧妙さもあるが、ここであえて日本盤にリンクしたのはT7 『Gamera』がボーナストラックとして収録されているためだ。 アコースティックギターの素朴なメロディから徐々にバンド全体のうねりが紐解かれてゆく、95年に12”のみでリリースされたこの曲をTortoiseのベストとして挙げるファンも多い。

今年、6枚目になるアルバム『It's All Around You』を発表したTortoise、彼らのロック解体はまだ終わらない。

*画像もしくはこちらをクリックするとamazonから購入できます。

(By Yuichi Okada )

【製品情報】
Amazon価格: ¥2,447
オリジナル盤発売:1996年

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June 04, 2004

選ぶ音楽1 -Muzseekの一つの手引きとして-

[ Essay ]

「良いものを自分で探していくという事がこれからの音楽にも必要な気がします。」1996年、細野晴臣<アーティスト情報>は若者達に向けてそう話していた。

今、私達の周りには音楽ソフトがあふれている。リスナーはその膨大な中からそれぞれの趣向に合わせて音楽を聴いている様に見える。供給する側も、多様化している需要に合わせて過去の音源等から様々な玄人向けの企画CDを発表し、或いはそれに逆らう形で相も変わらずCM大量投下にメディアミックス、タイアップ戦略でなんとか量を裁こうと、あの手この手で産業は効率的な生き残りを計っている。

近年ブライアン・イーノが繰り返し語る「音楽はもはや文化の中心ではない」との言を待つまでもなく、かつてはエルビスビートルズの楽曲やファッションで、世界中の誰もが流行を語り共通の感覚を持っていたように見えたし、Imagineが反戦運動を鼓舞し政治的な広がりを見せ、ゴダールをしてロックの階級闘争における可能性(その理想の是非は問わないにしても)を示唆させた。しかし、音楽がそのように社会的な共通の広がりと影響力を持っていたのは、気付けば遠い過去の事だろう。今、我々の周りにはそのように共通の話題にできる音楽は少ない。

「いろんな好みがあっていいじゃないか?」「たくさんの音楽がある事は豊かであることの証だ。」等々、これを肯定する向きも多いだろう。又、そもそも社会そのものが変わって来ていて、そこに在る音楽の役割についてもかつてとは同じ土台では比べられないのだから、注意深く考えて見る必要もあるだろう。私もそれらの見方自体に異論はない。経済的に豊かで、通貨の価値が相対的に高ければこそ、世界中から音楽ソフトを集め聴く事ができるし、様々に工夫されたオプションの中から気軽にそれらの商品を購入する事もできるだろう。だが一方で消費者は、例えば細野が薦めるようにそれらの中から本当に良質な音楽を探し、何かの感慨に出会える機会に恵まれているのだろうか?

実際にこの読者の方々は何の情報を基にCD等を選んで聞いているだろう。形骸化した業種同士が互いに連携している音楽産業が、効率的に利潤を上げる目的で組んだリリースのローテーションや新譜情報、MTV等で繰り返し流れるプロモビデオにラジオ放送。果ては広告代理店の息のかかった音楽評論や各誌のPRに至るまで、それらは音楽自体の内容や質とはあまりに関係がない。

このような状況を前にして、消費者個人には現実にどれだけの選択肢があるのか? 今も好きで聞いていると思っている流行の歌がある。だが商業的な理由とは別に紹介される音楽に触れる機会や手段がもっとあれば、その変わりに私は何を聞いているのだろう…。

例えばMuzseekは商業的な思惑が少なく、クリエイターの有志によって運営されているサイトだ。ここに寄稿されるレビューを読み、mp3を視聴してみたりする事は、既成の媒体とは違うソースを得る一つの方法ではあると思う。

(次回は、音楽のジャンル分けをめぐる話題についてと最初の“共通の物語”について考えながらフランクに論じてみたい。)

作曲家:芳村皇
Copy right © 2004, Ko Yoshimura. All rights reserved.

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June 02, 2004

CIRCUDELICA / The circulators

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『Breeze』試聴はこちらmusic.gif(Real Player)

「一体何者なんだ!?」 下北沢の小さなライブハウスで衝撃的な出会いをしたのが今から3ヶ月前。

年間150本近くのライブに参戦している私だが、演奏が始まった瞬間、一目見て恋に落ちてしまうように耳のモードをスイッチオンにしたバンド、その名は、The circulators(ザ・サーキュレーターズ)。以前から同じバンドで活動していた棚橋(ギター)と高仲(ドラム)、佐藤(ベース)の3人で2002年に結成。その後、星(ボーカル/ギター)が加わり現在、月3本ペースでライブ活動を展開中。

今年2月25日に発売された1st mini album 『CIRCUDELICA』全6曲、一気に点火して燃え尽きる炎のような感じの仕上がりとでも言おうか。消えた後に煙が目に染みたり、焦げた匂いがしないのが彼らの特徴。

音の余韻を楽しむというより、“燃えている=今”という瞬間に思いのたけが吐き出されている。音の重みとヴォーカルのひんやりとしたような、それでいて気取りのない切実な叫びのバランスが絶妙で、この2つがMIXされる事により、ガラスをバリバリにわってしまう破壊力が生まれ、思わず後ずさりしてしまうような迫力と緊張感で期待が高まる。メリハリの利いたスネアも、ギターソロの始まりも、この音じゃなきゃ絶対にダメなのだ! という主張が、演奏の隅々にまで漲っているのだ。

カート・コバーン(ニルヴァーナ)みたいに歌いたくて、声がしゃがれてしまったというヴォーカル。ミッシェル・ガン・エレファント、チバユウスケ氏の存在を浮かべてしまった。声が、似ているのだ。が、カテゴリーは一緒でも耳触りは違う。ギリギリまでリミッターがかかり、時々、限界を超える星の声は、所詮、人間は一人なんだという、どこか孤独な空気がまとわりついている。

『キリギリス』という楽曲では“君達と同じ灯を見る為に 傷ついてきたんだ”と歌われているのだが、メンバー4人それぞれのバンド歴は長く、失敗を重ね、これで最後だという思いがリアルに伝わってくる。

ラストを飾る『コスモリア』では、“感動はいらない 終わりにしよう”と歌いながらも、“限りある遥かな日を訪れる最期の日に 死ぬまで”という歌詞で締めくくり、苦しくても生きていかねばならない気持ちを熱く奏でている。 「生活してて楽しいことなんかないよなぁ」と語るままの心情が歌われ、歌と歌い手の間が実にダイレクト!

全編通して、フェイドアウトで終わっても、カットアウトで終わるようアグレッシブな感じからボコボコにやられても立ち上がる孤独なボクサーを連想させられた。彼らのアッパーとキックという名のサウンドとメッセージが、聞き手の脳ミソにもボディに効くのだ!

これこそが、あの強烈な印象を生み出した最大の要因なのではないだろうか・・・。

(By 藤重亜美

【製品情報】
Amazon価格:――
CD発売:2004.2.25

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